高級ホテルの窓ガラスは透き通り過ぎている

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妹の結婚式で東京に呼ばれ、高級ホテルに泊まらせてもらうことになった。両親と私だけだというのにゴージャスにもスイートルームを予約してくれた。これもひとえに妹の選んだ相手というのが土地を沢山持っている人で、超お金持ちであるということにつきる。田舎者の私たちはその高級ホテルの玄関ロビーにいる時から不審者丸出しなくらいビビりまくっていた。その場違いな雰囲気に気後れしまくっている私たち、周囲の人たちの目にはどんな風に映っていただろう。フロントの人も、そんな私たちを見て、きっと田舎から出て来て今生の思い出にと頑張ってトリプルルームでも予約したんだろうぐらいにしか思っていなかったはずだが(←とんでもなく偏見)、私たちの名前を出した途端に態度が変わったような気がする(←被害妄想も入っているかもしれないけれど)。エレベーターで耳が痛くなるくらいの高層階まで連れていかれ、ふっかふかの絨毯の敷かれた廊下を歩くと、やがて従業員がとある部屋の前で止まった。中に促されて入ってみると…まるで浦島太郎が竜宮城に連れていかれたときの衝撃(←知らんけど)に襲われた。とにかく広くて綺麗で…ゴージャスという言葉がぴったりだったのだ。田舎者3人はそこでよだれが垂れるんじゃないかっていうくらい口をあんぐりと開けてしばらく呆けてしまった。すると母があることに気づいて叫んだ。「ねぇ、見て、この部屋、窓がないじゃない!」「えぇ!?」私と父が窓に駆け寄って確かめてみると…もちろん窓はある。もしこの高さで窓がなかったら、今頃この部屋には容赦ない風がビュービューと吹きつけていることだろう。だけど母がそんな天然を炸裂させるのもわかるくらい、高級ホテルの窓ガラスは透き通りすぎている。あるんだかないんだかわからないような窓のある部屋で、どうか両親が明日の結婚式に備えてぐっすり眠れますようにと祈らずにはいられなかった。